【インド④】タージマハルの白を汚してはならない...
ガンジス川を満喫した僕は次の街アグラへ向かう。
バラナシからアグラも寝台列車での移動だ。
夕方5時半に列車が出発。予定では朝7時半に到着だったが遅れに遅れ、午前11時の到着となった。
途中で持って入った水は尽き、夜飯もろくに食べていないので腹ペコ。
水を売る商人が途中の駅で乗ってきても自分たちのところに来る前に売り切れてしまう有様。
あの時ほど水を切望したことはなかった。
駅を降りてすぐそばの宿まで歩いてみて、とても落ち着いた街なのだと感じた。
交通量はそこまで多くなく、特に声をかけられて絡まれることもない。
街は快適だったのだがこの日から僕は本格的に腹痛に苦しみ始めた。
常に少し胃が痛む感じで、ご飯を食べたらもっと痛む。
ほとんどのご飯が香辛料をふんだんに使っていて、食べたら荒れるのがすぐわかった。
必要最低限の食事に済ませ、スープと水ばかり飲んで二日過ごした。
雨が降って薄暗い部屋の中でずっとベッドに寝転んではyoutubeを見る。ナスDの大冒
険をみて、この人に比べれば全然過酷じゃないと謎の慰めもしたりした。笑
翌日はついにタージマハル。入場料は流石に高くて一人1,300ルピー。
とはいえこれは行かないわけにはいかない。
所有物のチェックを済ませて敷地内へと進んでいく。
最初に待ち構えるこの茶色いゲートを潜ると、その先には白くて完璧なシンメトリーの霊廟が見えてくる。
白い大理石で作り上げられたタージマハルは間違いなしの美しさだ。
インドはゴミがいたるところに落ちていて黒ずんでいるのに対して、この一帯だけは真っ白。
壁面の幾何学模様に惹きこまれる。水面に映る像がなんとも涼しげで、夕日が射してくると余計に映えて見える。
タージマハルは当時の王シャージャハーンが愛する人のために建てたお墓だ。
内部には棺があり、僕らのような観光客が来なければ安らかに眠れるのだろうと思った。
内部へと進んでいく途中で腹痛に襲われた。トイレはかなり遠い。
少し駆け足でまわってことなきを得た。笑
もう一度ゆっくり見直したり、日が暮れてくるのを待つなどしてかれこれ3時間は眺めていた。
今まで見てきた建造物の中でトップクラスに綺麗だった。
僕の中ではアンコールワットとトップ争い。
美しさの路線が違うから甲乙つけがたい…
近年、大気汚染の影響によりタージマハルは少しその白さがくすんできているという。
インドの大気汚染は深刻だ。
夕日が沈むところも地平線に綺麗に落ちていくところまでは空がくすんでしまうので見れないのだ。
「美しい景色が見れない」という理由から環境保全の意識は育めたりしないかなと思った。
お目当のタージマハルも見れたところで、ふと自分が”旅に飽きてきた"ことに気がついた。
毎日ただ海外で移動しながら生活するだけで楽しかったのが、だんだん日常になってきたのだと思う。
だんだんとできることの範囲が広がってきて余裕が出てきたこともあるだろう。今は一時的に二人旅だから尚のことだ。
飽きてからが旅の始まりだと誰かが言ってそうだが、本当にそうなのかもしれない。
このあとは一週間ほど飛行機を待ちながらデリーでゆっくりするつもりだったのだが、この”飽き”という感覚に向き合った結果、急遽予定を変えることにした。
インドの西端、ジャイサルメールという街を目指すことにしたのだ。
古めかしい街を散策したり、砂漠を歩く自分を想像するとワクワクしてきた。
ここまでインドを共に旅してきたヒロトは北部のマナリ、レーといったヒマラヤが見える辺りへといくという。
僕は西端へ、彼は北端へ。
突然のお別れ。この急な感じがいいのかもしれない。
彼とはまたどこかで会うだろう。ありがとうといって各々別の電車に乗る。
予定を決めてその通りに進めて行くのは旅ではなく旅行。
計画性はいるけれど、ある程度の不確実性がないと楽しくない。
予定は未定。柔軟に変えていけるのが旅の醍醐味なのかもしれない。
情報の確認をするだけでは物足りない。
この日、僕は少し旅人になれた気がした。
次はピンクシティとも呼ばれるジャイプールへ!一人旅の再開。